
コリンエステラーゼ阻害薬について見ていきます。
認知症の多くは、不可逆性です。しかし、「治す」ことはできなくても、その進行を遅らせることはできます。今回は、そんな「遅らせること」を目的として使われている薬のなかから、「コリンエステラーゼ阻害薬」というものを取り上げましょう。
目次(読みたいところまで移動できます)
1.コリンエステラーゼとは?
コリンエステラーゼとは、人間の体にある酵素のうちの一つです。これには2種類があり、「真性」と「偽性」に分けられています。ただし、「偽性」とされている方が「偽物である」ということではありません。偽性とは、すい臓などの臓器や結成に含まれているものを指し、真性は赤血球などのなかに含まれているものを指します。優劣ではなく、「どこに含まれているのか」ということの違いです。
1-1.アセチルコリンエステラーゼ
さて、「アセチルコリンエステラーゼ」というものがあります。このアセチルコリンエステラーゼは、「アセチルコリン」という成分を、「酢酸」と「コリン」の2つに分けます。これは、上でいう、「真性コリンエステラーゼ」のことを指します。
1-2.プチリルコリンエステラーゼ
これは上であげた「偽性」のコリンエステラーゼのことです。健康診断などで使われているのはこちらの方です。
2.コリンエステラーゼ阻害薬の作用
コリンエステラーゼ阻害薬の概要を知るためには、まずは、アルツハイマー型認知症のメカニズムを知らなければなりません。
アルツハイマーにおいては、上でも少し触れた、「アセチルコリン」という神経伝達物質が少なくなってしまいます。神経の伝達物質が少ない状態ですと、情報の受け渡しがうまくいかず、認知症が進んでしまうのです。
そこで、上であげた、「アセチルコリンエステラーゼ」の項目に戻ってみましょう。アセチルコリンエステラーゼは、神経伝達物質であるアセチルコリンを分解してしまうのでしたね。
では、認知症を悪化させないためにはどうすればいいのか。それには、アセチルコリンエステラーゼの働きを抑え、アセチルコリンの量を減らさないようにすればいいわけです。このようなことを目的として、コリンエステラーゼ阻害薬は作られています。
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3.コリンエステラーゼ阻害薬の医学的用途
コリンエステラーゼは、認知症だけでなく、重症筋無力症の対処策としても利用されています。
4.認知症治療薬の登場
このような働きを使用して、認知症のための薬が出てきています。
4-1.ドネペジル
「アリセプト」「ドネペジル塩酸塩」という呼び名でも呼ばれます。アルツハイマー型認知症だけでなく、レビー小体型認知症にも効果があるといわれ、ゼリー状のものやシロップ状のものなどもあります。
4-2.ガランタミン
「レミニール」という商品名を持ちます。アルツハイマー型認知症に効果的とされています。1日2回の服用。
4-3.リバスチグミン
商品名は「イクセロンパッチ」などです。アリセプトと似た作用です。貼り薬としてよく用いられます。
4-4.メマンチン
1週間ごとに薬の量を増やして使って行きます。アリセプトと一緒に使うことができる、ちょっと珍しい種類であり、かつ併用することによって相乗効果を期待することができます。幻覚などの副作用が出ないというメリットはあるのですが、めまいなどがみられることがあります。
5.まとめ
コリンエステラーゼ阻害薬について見てきました。
コリンエステラーゼの作用というのは、かなり難解であり、完全に理解するのは難しいかもしれません。しかし、このコリンエステラーゼが、認知症において、大きな影響を与えているものであることは確かです。また、これらの働きから導き出した薬は、認知症対策として非常に有用であり、いろいろなものが開発されています。上手に利用していきましょう。