
若年性認知症について見ていきます。
「認知症」というと、「お年寄りの病気」「70歳、80歳になってからかかる病気」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、実際には、認知症は、若い世代にも起きている病気なのです。
働き盛りの世代が若年性認知症になると、家族は精神面・子育て面・経済面で非常に大変だということに察しがつくと思います。
若年性認知症で悩む事態をできる限り避けるために、実際の症状や特徴、予防に関する知識などは知っておいた方が良いでしょう。
そこで今回は、「若年性認知症」について知っておくべき知識を8つ紹介します。
目次(読みたいところまで移動できます)
1.①若年制認知症の平均発症年齢は51歳
「若年性認知症」とは、その名前の通り、「若年」に起きる病気です。
「若年」とは64歳以下の人のことで、65歳以上の高齢者が患う「認知症」とは区別されます。
若年性認知症を患う平均年齢は、51歳だと言われ、10万人あたり48名(小数点以下四捨五入)がこの病気を患うとされています。
2000人に対して約1人の割合で起こるものですから、その頻度は決して高くはありません。
しかし、それゆえに、医療機関などにかかっても、発見されにくいという問題があります。
若年性認知症の症状は、記憶障害から始まることが一般的です。
51歳という年齢は、会社のなかでも管理職の地位についていることが多い年齢のため、大事な会議のスケジュールを忘れてしまっていたり、会議の存在自体を忘れてしまったりしてしまいます。
もちろん、このような「度忘れ」は、健康な人でも起こりうることです。
しかし若年性認知症の場合、他者からそう指摘されても、「ああ、そうだった、思い出した!」ということがなく、ただの度忘れとは大きく症状が違います。
また、ひどくなってくると、現在自分がいる場所や「今日」の日付が認知できなくなってしまいます。
2.②若年性認知症の種類
「若年性認知症」と一口に言っても、その種類はさまざまです。
それを見てみましょう。
2-1.脳血管性型
脳血管型の若年性認知症は、脳の病気によって引き起こされることが多いものです。
脳梗塞などがその代表例であり、悪化と改善を繰り返します。
脳血管性型の場合、その人の「性格」自体には大きな変化がない反面、発症して数年のうちに亡くなるケースが多く、とても危険な病気です。
脳血管性型を起こす原因である脳梗塞などは、糖尿病や高コレステロール、あるいは高血圧が発症リスクである、と考えられています。
50代に入ると、これらの数値が異常になる人も増えてきますが、若年性認知症は、生活習慣とも無縁ではないのです。
2-2.アルツハイマー型
脳の細胞というのは、毎日少しずつ減少していきます。
これ自体は、健康な人にも見られる症状です。
しかし、アルツハイマーを患ってしまうと、この「減少のスピード」が恐ろしく早くなってしまいます。
これによって、知能の低下などが起きると考えられています。
アルツハイマー型の厄介なところは、このような「メカニズム」はわかっていても、「では、アルツハイマーを起こすその病気や原因は何か?」は不明である、ということです。
アルツハイマー型の場合、知能の低下だけでなく、その人の性格そのものまで大きく変化させることがあります。
ただ、アルツハイマー型の「若年性認知症」の場合、脳血管性型に比べると平均寿命は長く、10年~15年ほどです。
※ただし、個人差が大きく、ケアやリハビリなどで進行を遅らせることに成功しているケースは多く見られます
2-3.その他
上で挙げた2つが、若年性認知症の代表的な種類です。
しかしそれ以外にも、頭部に傷を受ける(たとえば転倒して頭をぶつけるなど)ことによって起きる「頭部外傷性認知症」、アルコールの大量飲酒によって起こる「アルコール性認知症」などがあります。
3.③若年性認知症になりやすい人
若年性認知症を完全に防ぐことはできません。
アルツハイマー型のように、その原因がはっきりと特定されていないものもあるからです。
しかし、脳血管性型の若年性認知症は、脳梗塞に代表される「病気」が原因の一つとなっています。
脳梗塞を起こす原因もさまざまですが、そのなかの一つに、「生活習慣」があることは、すでに述べたとおりです。
つまり、
- 塩分の多い食事
- ストレスが多い
- 偏食傾向
- カロリーのとりすぎ
- 睡眠時間が短い
- 喫煙者
- 大量のアルコールを飲む
という生活をしている(習慣がある)人は、若年性認知症になる可能性が高いと言えます。
このような生活は、生活習慣病を引き起こし、そこから脳梗塞などの病気につながり、最終的に若年性認知症につながっていくからです。
4.④ 若年性認知症の初期症状と特徴
若年性認知症は、初期症状として、「スケジュール管理がうまくいかなくなる」「伝言が伝わりにくくなる」「通いなれた道でも迷うようになる」「同じ服、同じ行動などを繰り返すようになる」といったものが現れます。
また、物事に対する関心や意欲が下がっていくのも特徴の一つです。
これらの症状が出た後でも、「つい度忘れした」「近ごろストレスがたまって疲れているんじゃないの?」と、本人も周りも見過ごしてしまいがちなのが、若年性認知症の怖さです。
しかし、このときに、自分(あるいは家族)の異常に気付き、対策をしていけば、若年性認知症に対抗していくことができます。
5. ⑤若年性認知症の治療方法
若年性認知症の対策には、早期発見と早期治療が大切です。
5-1.早期発見が重要
若年性認知症は、「患う前の状態」に戻ることはできません。
しかし、早期に発見することによって、進行を遅らせることはできます。
自分自身、あるいは自分の家族(特に夫や両親などのように「頼るべき相手」)が若年性認知症である、ということを認めるのは、とても勇気のいることです。
しかし、早い段階で「若年性認知症である」と知ることができれば、その後の治療に重要なのです。
5-2.早期治療
アルツハイマー型の場合、進行を遅らせる薬が処方されます。
また、完全に「治す」ことはできなくても、リハビリや生活習慣の改善による対策を講じることもできます。
この「早期治療」のときにキーになるのは、医療機関と家族の連携です。
自分たちだけで抱え込まず、必ず病院の門戸をたたくようにします。
5-3.リハビリが進行を遅らせる
「リハビリ」というと、骨折などをした人が、元の運動機能を取り戻すために行うものであるように思いがちです。
しかし、若年性認知症にも、リハビリは有効です。
軽い運動をしたり、音楽を聞いたり、思い出話をしたり、手や頭を使ったりするゲームを、日常生活に取り込みます。
また、家族が認知症を患うと、心配のあまり、家事や仕事を先回りしてやってしまう人もいます。
しかし、「何もすることがない状態」というのは認知症を悪化させる要因になるので、可能な限り、家事などをお願いするようにしましょう。
ただし、火を使う料理などは危険も大きいため、必ず誰かが付き添うようにします。また、無理強いは禁物です。
6.⑥若年性認知症を予防する方法
「絶対に若年性認知症にならない方法」はありません。
しかし、規則正しい生活をし、節制に努め、ストレスの少ない生活をすることによって、若年性認知症になるリスクを減らすことはできます。
若年性認知症は、本人だけでなく、家族の負担も大きい病です。
生活習慣を見直すとともに、早期発見に努めるようにしましょう。
関連記事:若年性認知症の予防のために絶対心がけたい12のルール
7.➆若年性認知症の介護
若年性認知症は、その病気を患った本人がもっとも苦しいです。
しかし、それを支える家族もまた、苦しむのも事実です。
家族が患者さんをサポートするのと同時に、家族にも、行政のサポートが必要なのです。
7-1.認知症の人には家族のサポートが不可欠
認知症を患った人にとって、家族のサポートは絶対に欠かすことができないものです。
上で挙げた「リハビリ」の例がその最たるものですが、日常生活で起こりがちなトラブルを助け、見守り、時には手助けをする必要がでてきます。
迷子対策やスケジュール管理の方法を考えたり、医療機関と打ち合わせをしたり、時には暴力的な言葉や意味の分からない言葉も否定せずに受け止めたりする、という心構えと働きが必要になります。
また、働き盛りの大黒柱が若年性認知症を患ったとき、経済的な面を考えることも大切です。
経済的負担を軽減する方法として、「傷病手当金」「障害年金」などが利用できますので、積極的に使って行きましょう。
8.⑧若年性認知症において覚えておきたい制度
このように、家族には「やらなければならないこと」がたくさんあります。
また、若年性認知症の場合、家族の精神的なダメージもとても大きいものです。
これらを「なくす」ことはできません。
しかし、行政などのサポートを受けることで、負担を軽減することはできます。
そして、それは家族のみならず、患者さん本人にとっても良い影響を与えるはずです。
8-1.自立支援医療制度
厚生労働省は、「自立支援医療制度」という制度を定めています。
若年性認知症を患う年齢の人の場合、医療費は原則として3割負担です。
しかし、この自立支援医療を利用すれば、指定された病院(医療機関)での自己負担金額が1割になります。
上記でも触れたように、金銭的な負担はとても大きいものです。
これらの制度は遠慮するようなことなく利用するようにしましょう。
8-2.社会保障制度
また、障害者手帳の交付を受けることで、税金面などの負担が軽くなったり、交通費が減免されたりといった措置を受けることができます。
「障害者手帳」というと、「体に何らかの障害がある人に交付されるもの」というイメージが強いと思われますが、実際には、認知症(アルツハイマー型)の場合でも交付されます。
9.まとめ
若年性認知症について見てきました。
若年性認知症で知っておくべき8つの知識
1.①若年制認知症の平均発症年齢は51歳
2.②若年性認知症の種類
3.③若年性認知症になりやすい人
4.➃若年性認知症の初期症状と特徴
5.⑤若年性認知症の治療方法
6.⑥若年性認知症を予防する方法
7.➆若年性認知症の介護
8.⑧若年性認知症において覚えておきたい制度
まずは「自分も認知症になる可能性がある」という意識を持つことです。
加齢とともに、疲れやすくなったり、視力が落ちたり、といった衰えを感じる人は増えると思います。
それに伴い、さまざまな病気のリスクも増えていきます。
その中の一つに若年性認知症があり、誰にでも罹患の可能性が潜んでいます。
若年性認知症について事前に知っておき、自分の身体に気を使い、少しでも病気のリスクを遠ざけられるようにしましょう。
コメント