
ヒートショックについて見ていきます。
「ヒートショック」という言葉をご存じでしょうか。
ヒートショックとは、急激な温度変化が原因で生じる身体変化のことで、特に高齢者の身近にひそむ死亡要因の一つです。
脱衣所や浴槽などでクラッとした経験をみなさん一度は持っていると思いますが、実はその症状こそヒートショックと呼ばれるものです。
家庭内で高齢者が死亡する原因の4分の1がヒートショックに関係しているとされ、早急な対策が呼びかけられています。
そこで、ヒートショックを予防するために、この症状の注意点と対策を詳しく見ていきましょう。
ヒートショックの特徴を抑えておけば、今日からでも対策することは可能です。
ここでは、ヒートショックの詳しい内容と7つの対策を紹介します。
目次(読みたいところまで移動できます)
1.ヒートショックとは?
- 急激な温度変化によって起こる健康被害
- 冬場の入浴で多く症状が現れる
- 年間死亡者数は交通事故による死亡者数の4倍以上
ヒートショックとは、暖かい部屋から寒い部屋への移動などによる急激な温度の変化によって血圧が上下に大きく変動することをきっかけにして起こる健康被害のことです。
失神や心筋梗塞、脳梗塞、不整脈を起こすことがあります。
入浴時に血圧が急激に低下してしまい、そのまま失神して溺れてしまうケースもヒートショックに当てはまります。
1-1.冬場の入浴時にヒートショックが増える
東京都健康長寿医療センター研究所の調査によると、特に外気温が低くなる12月から1月にかけてヒートショックに関連する入浴中急死は最も高くなり、最も少ない8月の11倍にもなります。
住宅内で暖房をしていない脱衣所や浴室で衣服を脱ぐことで、急激に体温が下げられ、寒冷刺激によって血圧が急激に上がります。
しかし、浴そうにつかっていると温熱効果で血流が良くなるため、急激に血圧が低下します。
そして、温まった身体で寒い脱衣所に戻ることで、再び血圧が上昇します。
この血圧の変動がヒートショックを引き起こす要因となります。
1-2.ヒートショックによる死者は年間1万7000人
東京都健康長寿医療センター研究所がおこなった調査では、2011年に全国で約1万7000人もの人々がヒートショックに関連した入浴中急死にいたった、と推計されました。
交通事故による死亡者数の4倍以上であり、そのうち高齢者は8割を超える1万4000人にもおよびます。
1-3.ヒートショックの認知度は国民の約半数
ヒートショックの要因を認知促進し、予防対策を啓発していく暖差リスク予防委員会は、2014年10月に全国の20~70代の男女2500人を対象に、冬の住宅に関する調査を実施しました。
調査の結果、約半数の人がヒートショックという言葉自体を知らないということがわかりました。
ヒートショックは危険な症状ですがしっかり対策することができます。
そのためには、まずはヒートショックについて知ることが大切です。
2.ヒートショックの影響を受けやすい人
以下に当てはまる人は、ヒートショックの影響を受けやすいため、特に注意が必要です。
- 65歳以上の高齢者
- 高血圧・糖尿病・動脈硬化を患っている
- 不整脈がある
高齢者は血圧変化をきたしやすく、また体温を維持する生理機能も低下しているため注意が必要です。
高血圧の人は血圧の急激な変化に伴って低血圧を起こしやすいため、意識を失うことが懸念されます。
糖尿病や動脈硬化を患っている人も、血圧のスムーズな維持が難しくなっているため、注意が必要です。
また、飲酒後に入浴をする人、熱い湯・一番風呂を好む人もヒートショックの影響を受けやすいです。
3.ヒートショックを予防する7つの対策
ヒートショックの予防には、急激な温度差をなくすことが重要です。
そのための具体的な対策を見ていきましょう。
3-1.脱衣所やトイレに暖房器具を設置
冷え込みやすい脱衣所やトイレをあたためることは効果的な対策の一つです。
居間と浴室の温度差をなくすことで、身体に急激な温度変化を与えないようにしましょう。
高齢になるほど気温や室温に対する感覚は鈍ってくるため、「寒くないからだいじょうぶだ」と何もしないのではなく、暖房器具を置いて入浴前にあたためておくようにしましょう。
ハロゲンヒーターのように、スイッチを入れてすぐあたたかくなる暖房器具が向いています。
3-2.浴室をあたためておく
脱衣所があたためられていても浴室が冷えたままでは効果は半減します。
あらかじめ浴そうのふたを開けておいたり、シャワーを活用してお湯張りをしたりすることで浴室をあたためておきましょう。
高い位置に設置したシャワーから浴槽へお湯を張ると、浴室全体をあたためられるため効果的です。
3-3.お湯の温度を38~41度に設定
シャワーや浴そうの温度が高いと入浴後の体温と浴室・脱衣所との温度差が大きくなるため危険です。
そのため、温度差を小さくするためにもお湯の温度は41度以下に設定しておくことがおすすめです。
3-4.飲酒時には入浴をしない
食後一時間以内や飲酒後は血圧が下がりやすくなっていて、入浴前後の血圧の変動が大きくなるので、ヒートショックになりやすいです。
食事・飲酒の前に入るよう心がけ、もし食後・飲酒後に入浴する場合は1~3時間程度、間を置くようにしましょう。
3-5.夕食前・日没前に入浴する
14~16時頃のように、外気温がまだ高く、人の生理機能が活動的だと温度差へ適応しやすいので、夕食前や日没前の入浴が効果的です。
3-6.家族がいるときに入浴する
家に一人のときに入浴し、万が一ヒートショック状態になってしまった場合、自分ではどうにもできません。
家族がいる時間に入浴するようにし、入浴前には入浴することを知らせてから入るようにしましょう。
ひとり暮らしの人や、家族と時間を合わせるのがむずかしい人は、公衆浴場や銭湯など人の目があるところで入浴するのも一つの方法です。
3-7.入浴前後にコップ1杯の水を飲む
体内の水分が不足すると高血圧になりやすいので、入浴の前後に水分補給をすることがおすすめです。
お湯の中につかっているため気づきにくいですが、入浴中にかく汗の量は500~800mlともいわれています。
1本のペットボトルに水を入れて、浴室に持ち込み、入浴後に飲み切れるよう、入浴前~入浴中に少しずつ飲むのもいいかもしれません。
4.入浴の仕方でもヒートショックを回避
入浴のしかたを一つとってもヒートショックの回避につながります。
急激な温度変化を起こさないようにする意識が大切です。
- 徐々に身体を温めるように手や足といった末端の部分にかけ湯をする
- 足からゆっくりと湯船に入る
- 長湯はせず、ほんのりと汗ばむ程度で出る
- 急に立ち上がらず、ゆっくり湯船から出る
5.まとめ
ヒートショックについて見てきました。
ヒートショックを防ぐ6つの対策
1.脱衣所・トイレに暖房器具を設置
2.浴室を暖めておく
3.お湯の温度を38~40℃に設定
4.飲酒時には入浴をしない
5.夕食前・日没前に入浴する
6.一人での入浴を控える
ヒートショックは高齢者の大きな死亡要因です。
冬場の脱衣所・浴室・トイレなど、冷え込みやすく急激な温度変化が生じやすい場所で起こりやすいことを踏まえ、対策をしましょう。