
認知症を予防する食事について見ていきます。
食事は、人間の生活の根幹となるものです。今回は認知症と食事の関係についてみていきましょう。
目次(読みたいところまで移動できます)
1.食生活と認知症の関係性
「認知症を防ぐ食生活」は存在する、というのが、現在の一般的な見方です。それには2通りの考え方があります。
1-1.認知症の危険因子を減らす
その一つが、「危険因子(原因となり得る身体の悪い状態)を減らす」というものです。たとえば高血圧や糖尿病は、認知症の危険因子の一つとなります。これらは食事と密接に関係しているため、これらになりにくい食事を心がけることは、認知症を予防することにもつながります。
1-2.認知症発症の抑制効果
より積極的に働きかけることが可能なのが、この「発症の抑制効果がある食材を取り入れる」ということです。これに関しては、後述の「食材」のところで詳しくお話していきましょう。
2.認知症予防に効果的な16の食材と食事
ここからは、具体的な「食材」についてお話していきます。
2-1.オリーブオイル
オリーブオイルは非常に「健康的な油」であると言われています。オレイン酸で主に構成されているのですが、これは、神経伝達をスムーズにすると言われています。アルツハイマー型認知症の原因物質ではないか?と言われて研究の進んでいるアミロイドβ(タンパク質の一種)を、エクストラバージンオイルが減少させるとも言われており、その有用性が着目されています。
2-2.ココナッツオイル
ココナッツオイルもまた、オリーブオイルに並んで、健康によいとされている油です。脳のエネルギー源として働くことができ、糖尿病の予防にも役立ちます。ただし、ココナッツオイルはオリーブオイルに比べてクセがあり、料理への使用にはちょっとコツが必要です。
2-3.亜麻仁油
オリーブオイルやココナッツオイルはフライパンに敷いて使う使い方が一般的ですが、亜麻仁油はサラダなどに使われることが多いようです。後の「青魚」のところでも詳しく触れるDHAなどが含まれており、この摂取が可能です。アマニ油は、サラダオイルに比べてちょっとお高めなので、上手に摂っていきたいものです。
2-4.えごま油
油はそのカロリーの高さなどから悪役にされがちです。しかし、オリーブオイルやココナッツオイル、アマニ油などからもわかるように、有用に使うこともできます。えごま油も、そんな「お役立ち油」のうちの一つです。ココナッツオイルは認知症のなかでも特にアルツハイマー型に効果的だと言われていますが、えごま油は脳血管性によくきくと言われています。αリノレン酸がDHAに変換されることがその理由です。
2-5.カレー
「カレーが認知症予防にきく」と言われると、多くの人が驚くことでしょう。しかし、カレーを主食とするインドではアルツハイマーの起きる確率が低いと言われています。「クルクミン」という成分がその要因であるとも言われており、特にものごとの認識力に大きな影響を与えると考えられています。
2-6.青魚
「健康によい」と言われて注目される青魚。この青魚に含まれているDHAなどが、脳によい影響を与えると言われています。これは認知症を防ぐだけでなく、コレステロールの低下や血圧の低下にも役立つと言われています。値上がりしたとはいえ価格も手ごろですから、取り入れたいものです。
2-7.コーヒー
続いて、「飲み物」に着目していきましょう。コーヒーは認知症のリスクを下げると言われています。フィンランドなどで10年間の追跡調査が行われました。その結果、MMSE(認知症を判断するための検査として使われている検査方法)の実施時において、コーヒーを飲む習慣のある人は1.2%の低下にとどまるということがわかりました。飲まない人との差はわずか0.2%ではありますが、「飲まない人」と「毎日3杯飲む人」の数値の差は4.3倍にもなります。
ただ、コーヒーに関しては、「飲みすぎはよくない」という見解も出されており、「1日何杯が適当か」ということの答えは出ていません。
2-8.緑茶
緑茶の調査は、70歳以上の高齢者約1000人を対象に行われました。1日2杯以上緑茶を飲む人は、1週間に3杯以下しか飲まない人に比べ、「認知症である」と判断される範囲にあたる割合半分以下だったいう結果が出ています。
2-9.牛乳
子どもの学校給食でも出てくる牛乳は、認知症の予防にも効果的だと考えられています。乳製品の摂取は、まったく乳製品をとらない人とそうでない人を比べると、あきらかな差がでると考えられています。
2-10.カマンベールチーズ
白カビチーズとして有名なカマンベールチーズ。「牛乳」の項でも、「乳製品は認知症に効果がある」としましたが、カマンベールチーズと認知症の研究で、初めて「なぜ」発酵乳製品が効果を示すか、ということが明らかにされました。カマンベールチーズは、抗炎症作用があり、脳内にたまった老廃物を取り除いてくれる効果があるということです。これらは、それぞれ、特に「オレイン酸アミド」と「デヒドエルゴステロール」という成分によって行われます。
ちなみに、白カビチーズではありますが、カマンベールチーズは、チーズのなかでも屈指の食べやすさを誇ります。
参考:アルツハイマー病を予防できる可能性 - カマンベールチーズに原因物質の沈着を抑える成分を発見 -
2-11.チョコレート
高いカロリーと油分から、しばしば悪者にされるのが「チョコレート」。しかし高カカオのチョコレートを食べることにより、脳の海馬に含まれているBDNFの値が上昇すると言われています。アルツハイマーは、海馬が縮こまってしまうため、これに対抗するBDNFの値を増やすことは有効である、と考えられています。
ちなみに、基本となる量は、1日に25グラム。板チョコ3分の1~4分の1程度です。
2-12.卵
完全食としても名高い卵には、「コリン」が多く含まれています。これは、脳の神経の伝達物質のうちの一つです。これを積極的にとることは、記憶力の上昇につながります。卵は使い方もいろいろですから、取り入れやすいですね。
2-13.枝豆
動脈硬化の原因であるとともに、アルツハイマーのリスクを高める要因である「ホモシステイン」という物質があります。これはアミノ酸の一種ですが、枝豆には、これを防ぐ効果があります。
2-14.クルミ
無作為に選んだ447人を対象として行われた調査では、「クルミなどのナッツを含んだ食事をしていた人は、そうではない人に比べて、記憶力が向上する」という結果が出ています。ナッツ類そのものが、抗酸化作用や抗炎症作用をもっている上に、クルミにはポリフェノールも含まれているため、このような結果が出たと考えられています。
2-15.和食
和食は非常にバランスのよい食事です。特に、
- 青魚が中心であること
- カロリーをとりすぎないこと
- 野菜などが盛り込まれていること
がポイントです。ただし、塩分過多になりやすいので、その点には注意が必要です。
2-16.地中海料理
地中海料理も認知症予防に効果的です。
- 「オリーブオイル」が油の中心
- 色鮮やかな緑黄色野菜が多い
- クルミなどのナッツ類をとれる
- 認知症の予防に効果がある赤ワインなどを飲む習慣がある
しかし、地中海料理はカロリーが高くなりがちです。
3.継続が重要
認知症予防に効果的な食材を知った上で、もう一つ大事なキーワードをお教えします。それが「継続」です。
3-1.うまく継続していくには?
食材や料理は、1度変えたからといって、翌日に効果がでる、というものではありません。そのため、継続することが必要です。
継続するためには、「無理をしないこと」が大切です。毎日の食生活に気を付けることは大切ですが、「上の食材だけしか食べてはいけない」ということはありません。外食だってOKです。ただ、「意識する」「心がける」「情報を集める」ということだけは忘れないでください。そして、買い物をするときに、1食に1品でもいいので、上であげた食材を選ぶところから始めてみてください。
4.まとめ
認知症を予防する食事について見てきました。
認知症を予防する16の食材・食事
1.オリーブオイル
2.ココナッツオイル
3.亜麻仁油
4.えごま油
5.カレー
6.青魚
7.コーヒー
8.緑茶
9.牛乳
10.カマンベールチーズ
11.チョコレート
12.卵
13.枝豆
14.クルミ
15.和食
16.地中海料理
認知症に効果的だと言われる食材は、それだけを食べていれば絶対に認知症にならない、というものではありません。
しかし、取り入れやすい食材も多いですから、1日1食1品からでも摂取を心がけていきたいものです。
コメント