
サービス付き高齢者向け住宅の賃貸契約について見ていきます。
サービス付き高齢者向け住宅の賃貸契約には、終身借家権というものがあります。
一般の賃貸アパートやマンションでは、こうした契約のしかたは住宅を借りる側にとってあまり有利な条件ではないように見えますが、サービス付き高齢者向け住宅に関しては、こうした契約の形態を取ることが多く、その運営内容に即したものと言えるでしょう。
終身借家権は入居者本人だけでなく、その家族にも非常に重要な内容となるため、関係者全てがきちんと理解した上で契約を進めることが大切です。
目次(読みたいところまで移動できます)
1.終身借家権とはどんな仕組みか?
終身借家権は、賃貸契約をするにあたって、賃借人が持つことになる権利のひとつです。
一般のアパートやマンションでも賃貸契約を交わすときには借家権がありますが、これとは少し違います。この権利は、入居者本人よりもその家族や親族など相続の権利を持っている人たちに大きく関わりを持ちます。
1-1.普通借家権との違い
賃貸契約は、貸す人と借りる人の間で交わされて、お互いに権利と義務が生じます。賃貸人は住む場所を提供して、その設備を維持する義務と賃料を受け取る権利があり、賃借人は賃料を支払ってそこに居住する権利を得ることができるのです。
この居住する権利を「借家権」といい、この権利には「普通借家権」と「終身借家権」の二つに大別されます。
普通借家権を基本としているのは、一般の賃貸アパート。こうした普通借家権は、契約者である入居者から親族等に相続することができます。
仮に契約者が亡くなった場合にも、その家族や相続人が継続してそこを借りることができ、大家はそれを止めることはできません。
反対に終身借家権というのは、相続できない借家権となります。入居者が終身暮らすことはできますが、その後誰かに権利は引き継がれないため一代限りで終わることがほとんどです。
サービス付き高齢者向け住宅は賃貸住宅でありながらも、一般の住宅とは違う部分があるため、こうした借家権での契約が必要となったのです。
1-2.終身借家権の法律的根拠
終身借家権は、賃借人側からすると不確定なことが多く、一般的には不等な条件となります。
借地借家法でも終身での契約は認められていません。しかし新しく高齢者住まい法が制定され、例外的にこれが認められることとなりました。
そのため、高齢者住まい法の基準に基づいた建築物であることが条件となっており、こうした契約を結ぶためには、事業者は都道府県からの認可を受ける必要があります。
2.終身借家権は誰のため?
賃借人の権利が限定されており、賃貸人(事業者)に大きな利益があるように感じられるかもしれませんが、この制度は双方に大きな利益があります。
賃貸人は高齢者の一人暮しを安心して受け入れられるようになり、住宅の供給がしやすくなるため、入居者も選択の幅を増やすことができるようになりました。
また、一定の厳しい条件をクリアすることが求められているため、安全に快適な住居を得られます。車椅子での移動がしやすい幅の廊下や、歩行を助ける手すりの設置などのバリアフリー構造、一定の広さの居住スペースの確保などの条件によって優良な物件を判断することができるでしょう。
事業者側は、安心して入居者を募ることができますし、こうした制度に合った住宅を作るために補助金を受け取ったり、税金の優遇措置を受けたりすることができます。
これによりサービス付き高齢者向け住宅は住宅の新しい事業として注目されており、今後もまだまだ発展していくことが予想されます。さまざまなサービスや建物の快適さなどで趣向を凝らし、入居者の暮らしはますます充実してくることでしょう。
それぞれ双方のメリットが組み合わさり、より良い効果を上げています。
3.「おひとり様家庭」が増える社会
核家族が増えており、さらに結婚して家族を増やすことが当たり前と考える人が減ってきました。
反対に、男女ともに自立や自分らしい暮らしを求めて、一人での生活をする人が増えています。現代社会のこうした傾向は、おひとり様家庭を増やし、将来的にも続く場合には年齢の高い人たちの一人暮らしが増えていくことが懸念されます。
現在においても核家族化によって、夫婦二人、または連れ合いをなくした方の一人暮らしが多いと聞きます。
もちろん、子どもたちに頼りたくない、自由に暮らしたいという人も多いでしょう。
しかし、その反面、健康状態に不安を抱えていていざという時の頼りを必要としている人もいます。
こうした現状を踏まえると、サービス付き高齢者向け住宅はニーズに対応した適切な施設です。借りる側と貸す側の双方にメリットの高い新しい法の整備によって、新しい形のおひとり様家庭のスタイルができるため、私たちはさまざまな生活スタイルをより自由に安心して選ぶことができるようになっているのです。
4.まとめ
サービス付き高齢者向け住宅の終身借家権について見てきました。
終身借家権の制度は、一般の借地借家法では認められていませんが、新しくできた高齢者住まい法に準じてサービス付き高齢者向け住宅に利用されています。
暮らしを支える事業者が入居者を受け入れやすい環境を得られたために、入居する人たちもさまざまな選択肢を得ることが出来るようになりました。
各ポイントをしっかり把握して、入居施設を選ぶ際の参考としてみてください。
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